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*Dolce*

素敵サイト「キタユメ。」への愛を語るサイトです。他にもその日あった出来事や、趣味についてなど。

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大誉SSつー

前のSSの続きです。
全部書き上がったら、ちょこちょこ修正すると思います。

大和、ちょっとまじめに考えてみるの巻。

続きからどうぞ。




 一度家に帰って準備をしてきたという誉は、大和の部屋に入るなりこう言った。

「きつねの巣、案外片づいてんですね」
「だから俺はきつねじゃないって。あと案外って何」
 大和の抗議は当然のごとく無視された。
「これ、うちのじさまからです」
 誉が手渡したのは、何かの箱だった。
 見返りを要求したとはいえ勉強を教えてくれることといい、土産を持ってくることといい、今日の誉はなんだかおかしい。箱を受け取りながら、大和はそんなことをちらっと思った。
「わざわざどうもー。中身は?」
「きてくだされと、すっちょいさと、会津の天神さまです」
 大和は無言で箱を振った。がさがさと軽めの音が鳴る。固形のものがいくつか入ってる感じだ。
「………………………………………あの、ホントに中身何?」
「だから、きてくだされと、すっちょいさと、」
「いや、名前聞いてもわかんないから!何その聞き慣れない単語?会津弁?会津弁デスカ?」
「会津の銘菓です」
「………わーすごいネーミングセンスですね(棒読み)」
「ほ、褒めても何も出ませんよ!」
 褒めたんじゃないんだけど、まあいいや、と大和は早々に会話を切り上げることにした。
 冷蔵庫に入っていたペットボトルのお茶をコップに注いで誉の所に持っていくと、誉は大和の教科書を適当にパラパラと捲っていた。
「あー、勝手に見るなよー会長のエッチー」
「うっつぁし!それより、きつね」
 誉の目が、微妙に据わっていた。
「………………どうしてこれ、全ページに渡って落書きが描いてあんですか?」
「落書きじゃなくて、パラパラ漫画なんだけど………」
「こんなずくつねえことしてっから追試になんでしょーが!」
 バン、とテーブルの叩かれる音が響いた。
「追試までまともに眠れる日はないと思わせよ?」
 やっぱすんきの所に行けば良かったなぁ、と大和はちょっと後悔した。



「数学は公式と解法パターンさえ暗記すればどうにかなります。公式はどれくらい覚えてんです?」
 誉が教科書を開きながら尋ねてきた。首を15度ほど傾けて大和が言うことには。
「……XとかYとか入ってたのは覚えてるんだけど」
「まず公式暗記ですね」
 大和の教科書に誉の手で蛍光ペンでラインが引かれ、鉛筆の落書きだらけだった教科書が一気に華やいだ。
 おお、と大和が声をあげる。
「あんたの場合意味を考えろって言っても無駄そうですから、とにかくライン引いた所は丸暗記して下さい。1時間あげます」
「1時間経ったら?」
「テストです」
「えー」
「つべこべ言ってっと山さなげちまいますから」
 一瞬誉が自分をどこかの山に投げ飛ばす映像が頭をよぎる大和だったが、なんとなくニュアンス的に違う気がした。(後日調べたら「なげる」=「捨てる」という意味だった)
 仕方なく大和はルーズリーフに指定された公式を何度も書いていく。
 しばらくの間、シャーペンの芯が紙の上を滑る音と、2人分の息づかいが部屋の中を満たした。
 同じものを何度も書いていると、そのうち手が書くことに慣れてくる。更に書くと、意味はよくわからないまでも不思議と頭に入ってくる。
 ほとんど機械的に作業をこなしていると、不意になんで自分はこんなことをしているんだろうという思考が浮かんできた。勉強していることではなく、誉と2人きりでこうしているという状況への疑問。
 見返りを要求されたのに、あのまま断ってすんきやカロムの所に行くことだってできた筈なのに、どうして自分はこの会長に教えを乞うたんだろう。
 大和はちらりと向かいにすわる誉を見た。手持ちぶさたなのだろう、持参してきたらしい文庫本を読んでいた。目が軽く伏せられて、金色の睫毛が顔に陰を落としている。
 大体、人を出会い頭にきつね呼ばわりして、以降も何かと馬鹿にしてくる癖に、時折親切心の欠片を見せるものだから、好きなのか嫌いなのかも判然としがたい。そもそも自分は果たして嫌われてるのか好かれているのかもよくわからない。


 わからないだらけの中で、たった一つ確かだと言えるのは、自分の部屋に誉がいるというこの状況が、大和は意外に嫌ではなかったということだった。
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