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*Dolce*

素敵サイト「キタユメ。」への愛を語るサイトです。他にもその日あった出来事や、趣味についてなど。

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金色のねむり・7



「俺はここにいるよ」
 かけられた言葉に、イギリスは首を振った。そういう事じゃない、という意味を込めて。
「イギリス、泣かないで」
 アメリカが、ハンカチでイギリスの顔を拭いた。
「ここにいる。もしイギリスのこと置いてっても、ちゃんと待ってるって約束するぞ」
 そうだったら、どんなに良かっただろう、とイギリスは思った。
「なかないで」
 そう言うアメリカも泣きそうな顔をしていて、イギリスは目の前のアメリカを抱きしめた。
 温かさに、また涙が溢れた。
「……………………ごめんな。俺は、お前が好きだよ。でも、俺が今会いたいのは、お前だけど、お前じゃないんだ」
 ごめん、ともう一度謝って小さなアメリカの肩に顔を埋めた。
「イギリス」
 その時不意に、何か言いかけたアメリカの言葉に重なって、どこからか声が聞こえてきた。
 途切れ途切れの、どこか懐かしいその声は、確かにイギリスが会いたい人物のものだった。
「………………アメリカ?」
 いつの間にか、周りを霧が取り囲んでいた。霧の奥から声がする。
 イギリスは立ち上がって、霧の奥に目を向けた。
 帰れる。そんな直感があった。
 一歩踏み出したイギリスの服の裾を、アメリカが引っ張る。不安そうに目を揺らしながら。
「イギリス、行っちゃやだよ」
 本当にどうしようもなく目の前の子供が愛しくて、可愛くて、けれどイギリスはアメリカの頬に別離のキスをした。
「今から、お前に会いに行ってくる。嫌われててもいいから、お前に会いたいんだ」

 そして、名を呼ぶ声もこの場への哀愁や愛着も何もかも振り切って、走り出す。

 霧の向こうの声が近くなる。
「イギリスー!!」
 遠くから、あの子供の叫びが聞こえた。
「むつかしいことはよくわからないけど、俺は君が好きだ!!ずっとだぞ!!ずっとだ!!」
 前が見えないのは、霧だけのせいではなかった。
 声が段々近づいてきて、それがようやく歌だと解る。歌の聞こえる方に、ぼんやりとした光があって、イギリスはそれに向かって走った。どんどんと近づいて行く。


『Smiles awake you when you rise.
 Sleep pretty darling, ................』


 光が目の前に広がり、歌声が間近に迫るのと同時に、イギリスの意識が遠のいていった。







「Sleep pretty darling, do not cry,
 And I will sing a lullaby,
 And I will sing a lullaby.」

 目を開けると、見慣れた寝室の天井があった。肌に馴染んだシーツの感触。
 ベッドの中に、イギリスはいた。
 視線を巡らすと、ベッドの脇にアメリカがいた。目が合って、歌声が止む。
「もう起きたのかい?」
 イギリスは、目の前にいるのが眼鏡をかけた、もうとっくに可愛くなくなった青年のアメリカだという事を確認する。
「久しぶりに君の家に遊びに来てみれば、床で寝てたから驚いたよ。あれは新しい健康法か何かかい?」
「寝てた………?」
 どういう事だ。
 あれは全部夢だったとでもいうのだろうか。


『俺はイギリスが好きだぞ』

 明日も明後日もその先もずっとずっと。


 それでも。あの時、自分が感じた思いは、確かに本物だった。

 甘くて、優しくて、どこか切ないあの場所を、振り切って自分はここにいる。たとえ全部がまやかしだったとしても、それだけは嘘じゃない。
 2人のアメリカに感じた想いも、決意も、全て皆。


 ふと、イギリスは一つ胸に浮かんだ問いを、アメリカに投げた。
「………………………………お前、あの子守歌、覚えてたのか」
 アメリカは当然のように答える。
「ちゃんと覚えてるよ」
 とっくに、忘れているものだと思っていた。
 そういえば、アメリカと向かい合って話すのも久しぶりで、こうして見ると、昔自分が感じたような拒絶の空気はなかった。
 むしろ、懐かしさや慕わしさを感じて、それはきっとあの子供のおかげなのだと、そう思った。
 ぼやける視界の中で、アメリカが付け足した。
「だって、君、昔俺によく歌ってくれたじゃないか。今でも好きな曲なんだぞ」
 言い表せない感情で胸がいっぱいになって、イギリスはアメリカを抱きしめた。当然ながら子供のアメリカよりゴツゴツしていて、それでも同じ温かさを感じた。
「………アメリカ」
「なんだい?君、熱でもあるのか?」
「うるさい。………一回しか言わないから黙って聞け」
 イギリスは、大きく息を吸った。この機会を逃しては、おそらく一生言えなくなるであろう言葉を吐き出す為に。

「お前が好きだ」

 顔が見れなくて、アメリカの胸に真っ赤になった顔を押しつける。数秒経っても数十秒経っても沈黙が続いて、ようやく不安になったイギリスは顔をあげた。
 そこにあったアメリカの瞳に、不思議な色の感情があるのを、イギリスは見て取った。
 喜び、戸惑い、不安、驚き、そんなものがないまぜになっている。
 そして、次の瞬間、アメリカに強く抱き返された。
 強い抱擁に、イギリスは喜びや照れと同時に痛みを感じて、アメリカの胸を押し返す。
「馬鹿、痛い。力を緩めろ、この怪力」
「…………………………ったんだ」
「?」
「俺もだ。俺も、ずっと好きだったんだぞ」
 そこにあるのは、紛れもない満面の笑顔で、不覚にもイギリスはその表情にときめいてしまった。
 一瞬の隙を縫うようにして、アメリカがイギリスにキスをする。訳がわからないまま、何度もキスをされ、イギリスは呼吸困難になりかけた。挙げ句、髪やら体やらあちこち触ってくるものだから、さすがのイギリスも慌てだした。
「……ちょ……待て!落ち着け」
 そう言うと、代わりとばかりに再び強く抱きしめられた。
「…………………独立してから、ずっと嫌われてるかと思ってたよ」
 ぽつりと言われたその言葉に、イギリスは抵抗を止めて、アメリカの顔を見る。
 『行かないで』と泣いた時のアメリカと同じ目をしていて、イギリスは、なんだか今までの自分を笑い飛ばしたい気分になった。
「…………なんだ。お前、こんな所にいたのか」
「え?」
「いいんだ。ちょっと黙ってろ」
 そう言って、イギリスはアメリカの顔を両手で挟み込むと、あの子供にしたのと同じように額にキスをし、次に唇に触れた。
「はは、アメリカだ」
「イギリス?」
「はははは!」

 そう言って突然笑い出したイギリスを、アメリカは混乱しつつも、彼の笑いが一通り収まるまで抱きしめたのだった。
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