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*Dolce*

素敵サイト「キタユメ。」への愛を語るサイトです。他にもその日あった出来事や、趣味についてなど。

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金色のねむり・6



 目が覚めても、イギリスは元の時代に戻ってはいなかった。
 安堵だか落胆だかわからない溜息をついて、イギリスは切ったパンにバターを塗った。
「イギリス!ジャム!ジャムを塗ってくれ!ピーナッツバターもだぞ!」
「わかってるからそう叫ぶな」
 今日はピクニックに行こうと張り切るアメリカの為に、イギリスはランチのサンドイッチを作っていた。
 バターを塗って胡瓜を挟んだだけのもの、チーズとレタスを挟んだもの、ジャムを塗ったもの、と作っていると、アメリカが唐突にイギリスの手を掴み、
「俺もやりたい!」
 と言い出した。子供はなんでもやりたがるものだ、と思って、イギリスはバターナイフを渡す。
「イギリスの分、俺が作ってあげるからな」
 そういって嬉しそうに笑うアメリカを見て、イギリスも思わず微笑んだ。
 こうやって笑いあえる空気が酷く懐かしくて、密度の濃い幸福感に目眩がする。
 やはり、この子供がとても大切だと、再認識をする。
「アメリカ」
「なんだい?」
 その時、振り返ったあどけない顔が、一瞬だけ青年のアメリカと重なった。
 イギリスは、ひゅっと息を飲む。心臓が一度大きく鼓動して、冷たい血液が全身へと流れ出したような気がした。
 胸の奥の一番中心にあるものを、一片の慈悲もなく握りしめられたらこんな感触だろう、と頭の片隅で思う。
「……イギリス?」
「………………………なんでもない。なんでも、ないんだ」
 しかし、その言葉はイギリスが期待した程には力強い響きはなかった。




 アメリカの案内で、少し遠くの丘まで歩いていった。
 イギリスが草の上に布を広げると、アメリカはいそいそと昼食の入ったバスケットを置き、水筒を置く。
 丘の上はあっという間に立派なピクニック会場となった。
「イギリスとピクニックって、初めてだ!」
「そういやそうだな」
「今日は天気もいいし、ご飯食べたら泉で水浴びしようよ」
「ああ」
「…………………昨日から、イギリス、変だぞ」
 アメリカが心配そうな顔をする。
「なんだか優しい。熱でもあるんじゃないかい?」
「……お前喧嘩売ってんのか」
 違うよ、とアメリカはすぐに否定した。
「時々上の空だし、どこか遠くを見てるようだし………」
「だから、なんでもないんだって」
 溜息をついて、イギリスはこめかみを押さえた。知らず、眉間に皺が寄る。

「俺はイギリスが好きだぞ」

 いつになく真剣な表情で放たれた言葉に、イギリスは再び胸が痛むのを感じる。
「お前、」
「明日も、明後日も、その先も、ずっとずっと大好きだ」
 言葉が出なかった。
 ぎゅっと唇を横に引き結び、拳を握る。
 嬉しい筈だ。それなのに、『百年早い』と昨日のようにあしらう事もできないのは、目の前のアメリカの目の色が、あまりにも深かったからだ。イギリスは、その青空の瞳に、未来の彼を見た。
 思い出すのは、決別の瞬間。アメリカがイギリスのものでなくなった日、自国に戻るアメリカは一度だってイギリスを振り返らなかった。自分に向けられたもの言わぬ背中を見た時から、イギリスの痛みはずっと続いている。
「…………………嘘だ」
 声が震えた。
「嘘じゃないぞ」
「嘘だ!お前、そのうち俺のことなんてどうでも良くなる癖に!」
 自分の口から滑り出た言葉に、イギリスは目を見開いた。

 今、自分は何と言った?

「ならないよ」
 きっぱりと断言するアメリカが、とても愛おしくて、同時にとても憎らしいものに感じられた。そして、痛みの正体を思い知る。
 歪んだ笑みを、イギリスは浮かべた。本当は、小さなアメリカにこんな笑みは見せたくなかった。ここにいないアメリカ、その彼を思う自分を蔑む笑いなど。
「……なるんだ。俺は知ってる。お前は、俺を置いて、どんどん先に行って、振り返りもしなくなる。俺の気持ちなんか何一つ知らずに」
 ぱた ぱたり
 シートに涙の粒が落ちて、瞬く間に吸い込まれていった。
「…………なのに…………俺ばっかり、好きなんだ」
 今も、という付け足しは、声にならなかった。


 胸の中に、2人のアメリカがいる。
 まっすぐに自分を慕う小さなアメリカと、見向きもしなくなった大きなアメリカ。
 小さなアメリカを、大切だと思う。愛しくて、かけがえのない存在で、決して失いたくはないものだと思う。
 だけど。


「……………アメリカに、会いたい……………」


 今、イギリスが一番会いたいのは、目の前にいる彼ではなかった。
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